借金部屋の数字
現実と非現実の間にあるような怖い話を紹介。
今回は「借金部屋の数字」というお話。
これは3年前、俺が埼玉の実家に戻ってきたばかりの頃の話だ。親父が病気で入院したのをきっかけに、しばらく家を頼むって頼まれた。当時の俺は、自分の会社も辞めて無職になったばかりで、正直気が滅入っていた。地元には仲のいい幼なじみの雅樹がいて、久しぶりに飲みに行こうと誘ってくれたんだ。今でもはっきりと覚えてる。あの晩、夜風がやけに重かった理由は、きっとそのせいじゃない。
雅樹とは小・中学校が一緒だった。大人になってからもたまに連絡を取り合うくらいの仲だったけど、俺が帰ってきてから町の飲み屋でよく会うようになった。もう一人、飲み友のタカも一緒だった。タカはギャンブル好きで、やたらとスマホ片手にソワソワしてる奴だ。雅樹は昔から節度があって、無茶はしない。そんな三人で、ある金曜の深夜、いつものように駅前のスナックでダラダラ飲んだ。
「最近さ、オンカジ知ってる?」
タカが妙なテンションで聞いてきた。オンラインカジノのことらしい。俺は興味ないけど、雅樹は「ニュースとかで見たことある程度かな」って受け流す感じ。その日は結局、くだらない昔話で盛り上がって解散した。
でも、その日から俺のLINEには、タカからオンカジの画面写真がやたら送られてくるようになった。時々、タカの口調がどこか他人みたいに平坦になる瞬間があった。「2千…あと少し」「部屋の数字、揃った?」とか、妙に数字を気にするような内容だった。最初は冗談かと思ったけど、既読をつけるたびに画面の数字が変わる。まるで俺の返信次第で、何かが進んでいくみたいな——
ある雨の深夜、鈍い予感があった。ふとカーテン越しに窓を見ると、外から誰かがじっとこっちを見ている気がした。携帯が鳴って、画面を見ると、「カジノに来てよ」とタカ。既読をつけた瞬間、部屋の蛍光灯がチカチカと瞬いて、数字「2000」が浮かび上がる。ふいに部屋の四隅からパチ…パチ…という乾いた音が始まった。最初は雨音かと思った。でも明らかに違う。テレビのスクリーンに、砂嵐の画面。一瞬だけだけど、そこに埼玉県警の腕章らしきものをつけた複数の男と、不自然に笑うタカの姿がちらついた。どこか人形みたいな、表情のない“他人の顔”だった。
そのときグループLINEで、雅樹が「おい、タカが消えた。部屋に“2000”って文字ばっかのメモがびっしり貼ってある」と送ってきた。気づけば俺の部屋の壁にも、小さな紙が数枚貼ってある。「平均2000」と蛍光ペンで乱暴に書かれていた。
次の日、タカの家に警察が入ったらしい。借金とオンカジの履歴だけ残して姿がなかったと聞いた。奇妙なことに、駅前の防犯カメラには、俺と雅樹と“もう一人”、見覚えのない男がタカの隣に写っていたって——誰も知らない顔。
今も、雨が降る夜、部屋中が数字だらけになる夢を見る。2000、2000、2000…どこまでも増え続ける。目が覚めると、ベッドの下から紙切れが見つかる。もはや怖くて、開けなくなった。
まあ、信じなくていい。でも今夜も、既読をつけるたび、数字が揃っていく音が聞こえてくるんだ。
#借金 #オンラインカジノ #警察
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