#1838 消費者金融で100万円借り225万円「投資」「奥さんいなかったら好きになっていた」とSNSで告げられ。SNSやマッチングアプリで知り合った人物から投資を勧められ詐欺被害。2023.11.4

「奥さんいなかったら好きになっていた」とSNSで告げられ、消費者金融で100万円借り225万円「投資」

2023/11/03 13:19

読売新聞

 山形県内では今年、SNSやマッチングアプリで知り合った人物から「高額な利益を得られる」などと投資を勧められ、詐欺被害にあうケースが相次いでいる。10月27日までに19件、計約2億600万円の被害が生じており、昨年1年間の被害額(約9900万円)の倍以上に上る。225万円をだまし取られた庄内地域の60歳代男性は読売新聞の取材に応じ、経緯や巧みな手口について語り、「世の中に甘い話はない」と悔やんだ。(森田純矢)

1日にメッセージ40往復

[PR]

 この男性が趣味で人工知能(AI)で作った画像をX(旧ツイッター)に投稿した6月上旬、ある人物から「どうやって作ったのですか」と返信があった。

 投稿に反応があったのは初めてで、珍しさとうれしさを感じた。相手の住所表記は海外で、アカウント名は矢印と記号、漢字の計4文字で読めなかったが、SNSでは匿名が多いことから警戒しなかった。その日のうちに作り方を返信したことが、被害にあう第一歩となった。

 翌日、「LINEで話しませんか」と誘われ、メッセージのやり取りが始まった。相手は「Nora(ノラ)」と名乗り、経営者の娘で、兄が資産運用会社に勤務していると自己紹介してきた。送られてくるメッセージの大半は、高級腕時計を友人に贈ったことや、馬を持っているといった自慢だった。

 女性と思われる声で「おはようございます」と音声メッセージが数回送られた。妻子がいる男性に、「奥さんがいなかったら好きになっていたと思います」と好意をにおわすメッセージが届いたこともあった。

 多い時には1日に40往復ものやり取りを重ね、2週間ほどたった頃、突然、暗号資産(仮想通貨)に関する投資に誘われた。右肩上がりに伸びるチャートの写真が添付され、「1日で数十万円もうけた」と書かれていた。スマートフォンのアプリで投資を行う未公開の暗号資産で、多い時には1日に10~20%の利益が出るとされた。

 投資額が1回あたり40万~50万円だったことから、一度は「無理です」と断った。しかし、相手から約40ページに及ぶ偽の資料が届き、「あなたのために(1回あたりの投資額を)20万円にした。姉も300万円投資して220万円もうけた」と熱心に口説いてきた。男性は「できない額ではない。少し増やせるなら」と承諾してしまった。

「断るの申し訳ない」借金して振り込む

 男性は、相手が指定したアプリを入手後、約2時間かけて、暗号資産の購入や口座の開設など複雑な手続き方法を相手から教わった。途中で「どうしてここまで丁寧に教えてくれるのか」と尋ねると、相手は「友達だから」と答えた。

 紹介された暗号資産の価格は、上昇しているように見えた。この頃から男性は「自分のために色々してくれて、断るのが申し訳ない」という気持ちが強くなった。相手から「初期投資が多いほど利益が増える」と言われると、二つの消費者金融から借りた100万円も合わせ、計225万円を振り込んだ。

 だが、さらに約2週間後、借金返済のため、元本分の暗号資産を現金化しようとしたところ、40万円の所得税が必要だと伝えられて不審に感じた。「その瞬間、汗が止まらなかった。借金を返せるのかという恐怖心が大きくなった」。警察に相談し、詐欺被害にあったと気がついた。

 子供からは、「SNSで話しかけてくる人は詐欺の可能性が高い」とアドバイスされていた。それにもかかわらず被害にあい、家族からは「何をしてるの」とあきれられた。

 振り込んだ金は一切戻らず、100万円以上の借金が残り、一時は自己破産も考えた。男性は「自分が詐欺に引っかかるとは思っていなかった。世の中、絶対にもうかる甘い話はないのを痛感した」と肩を落とした。

50代が被害最多…老後に備え一定の貯蓄

山形県警本部

 山形県警捜査2課によると、SNSやマッチングアプリを使った投資詐欺には今年、20~60歳代の男女19人が被害にあっている。このうち、50歳代が最多の7人で、40、60歳代の各5人と続く。老後資金を確保するため投資を検討し、一定の貯蓄がある年代を犯人側は主に狙っているとみられる。

[PR]

 犯人側は時間をかけて、SNSで趣味や休日の話題などのやり取りを重ね、被害者に恋愛感情や親近感を抱かせる。その後、突然、投資を持ちかけるケースが多く、被害者がだまされていることに気づきにくいのが特徴だ。

 投資には一定額が求められるため、詐欺被害は高額になりやすい。村山地域に住む無職の50歳代女性は約5850万円を、庄内地域に住む自営業の50歳代女性は約3690万円をだまし取られた。

 同課の花輪美佳次長は、「SNS上のやり取りだけで、面識のない人を信頼してはいけない。投資はリスクがあり、本当に信用できる話なのか、周囲の人と相談しながら慎重に決めてほしい」と注意を呼びかけている。

You may also like...

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *